【小説・考察】ソードアートオンライン1巻の構成を考察してみた③ 逆算して構成を考える

 願わくは、皆様の創作活動の一助となりますように。

 

 ソードアートオンラインから学ぼう三回目の記事です。

 逆算して構成を考える。

 オリジナルストーリーを作るための記事ですので、ソードアートオンラインのような構成を作るにはどうすればいいのか、と考察していきたいと思います。

 

 ネラバレ含みます。ネタバレが嫌いな方はそのままウィンドウを閉じてください。

 ご理解いただいた方のみ、記事を読み進めていってください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ソードアートオンラインの構成は、前回の記事でも書いた通り、下記のようなものです。 

 

○一回目の選択肢。フレンドと一緒に行く?いかない? 59p/328p

▲本敵に勝った! と思ったら負けた! 伏線 186p/328p

○◆二回目の選択肢&失敗。主人公、過去を語る 190p/328p

○三回目の選択肢。主人公プロポーズをする 231p/328p

▲本敵とラストバトル! 伏線回収 297p/328p

◆大失敗。主人公を庇ってヒロイン死す 303p/328p

◆大成功。主人公現実世界に戻ってくる 321p/328p

 

 ストライク・ザ・ブラッドでも同じようなことをしましたが、ここでも「大成功」させるためには、何が必要か、という観点から考察していきます。

 

①「大成功」➡主人公現実世界に帰還する

②本敵を倒す

 

 では、本敵を倒すためには何が必要か?

 ヒロインへの愛です。

 愛しい人を殺したやつは生かしちゃおけねぇ! とスーパーサイヤ人化するわけですね。

 

①「大成功」➡主人公現実世界に帰還する

②本敵を倒す

③ヒロインを殺されたことによる真の力の覚醒

 

 実はこの「真の力の覚醒」に伏線はありません。

 直前にヒロインが、やはり愛の力によって回復不能な麻痺を打ち破っていますが、あまりにも直前すぎて伏線とは言えないでしょう。

 それでもご都合主義的に思わないのは、終盤の勢いがあるから。

 ヒロインが殺された! 主人公がキレて真の力に目覚める! という流れが良くある展開だから。

 読者は違和感を覚えなかったのだと思います。

 そして、ヒロインを殺されたことに怒るには、主人公がそれだけヒロインを好きでなくてはなりません。

 ・・・が、その前に。

 本敵を倒すには、本敵との戦いを開始しなくてはいけません。

 そして、「どんでん返し」が発動して、味方が実は本敵だった! と明かされなければ戦闘は開始しません。

 

①「大成功」➡主人公現実世界に帰還する 321p/328p

②本敵を倒す 309p/328p

③ヒロインを殺されたことによる真の力の覚醒 307p/328p

④本敵とバトルスタート

⑤どんでん返しによって、味方が本敵に変わる

 

 さて、ここで問題があります。

 主人公が本敵を暴いたのは、フロアボスを大した直後で誰もが満身創痍の状態。

 普通ならば万全の状態で本敵に挑みたいですよね。

 でも、主人公はボロボロの状態で本敵を暴き、なおかつ戦いを挑みます。

 なぜか? それは、フロアボスに挑む直前でヒロインが語った時間制限の効果が作用しているからです。

 

ヒロイン「わたしたちの体が、病院のベッドの上で、いろんなコードに繋がれて、どうにか生かされてるって状態なんだとしたら・・・そんなの、何年も無事に続くとは思えない」

主人公「・・・つまり・・・ゲームをクリアできるにせよできないにせよ、それとは関係なくない無リミットは存在する・・・ってことか・・・」

 

 これです。

 このシーンがあるからこそ、主人公が無理な突貫をしても違和感なく、むしろ必然性をもたせているのです。

 

①「大成功」➡主人公現実世界に帰還する 321p/328p

②本敵を倒す 309p/328p

③ヒロインを殺されたことによる真の力の覚醒 307p/328p

④本敵とバトルスタート

⑤どんでん返しによって、味方が本敵に変わる

⑥タイムリミットを意識した主人公が、強引に本敵を暴く

⑦ヒロインがタイムリミットを示唆する

 

 ヒロインがタブーとされている現実世界の話を主人公にしたのは、二人の関係がより密接になったからです。

 これは、③にも通じる部分ですね。両想い。愛によって真の力が目覚めるのです!

 

①「大成功」➡主人公現実世界に帰還する 321p/328p

②本敵を倒す 309p/328p

③ヒロインを殺されたことによる真の力の覚醒 307p/328p

④本敵とバトルスタート 297p/328p

⑤どんでん返しによって、味方が本敵に変わる 290p/328p

⑥タイムリミットを意識した主人公が、強引に本敵を暴く 288p/328p

⑦ヒロインがタイムリミットを示唆する 267p/328p

⑧初夜からのプロポーズからのハネムーン 218p~261p/328p

 

 はいきましたイチャラブパート!

 愛が深まります。

 この関係性になるためのイベントがコレ

 

➊「大成功」➡主人公現実世界に帰還する 321p/328p

②本敵を倒す 309p/328p

➌ヒロインを殺されたことによる真の力の覚醒 307p/328p

④本敵とバトルスタート 297p/328p

⑤どんでん返しによって、味方が本敵に変わる 290p/328p

⑥タイムリミットを意識した主人公が、強引に本敵を暴く 288p/328p

⑦ヒロインがタイムリミットを示唆する 267p/328p

⑧初夜からのプロポーズからのハネムーン 218p~261p/328p

9⃣

⑨主人公、罠に嵌められて敵に殺されかける

⑩そのきっかけを作ったのはヒロイン

 

 ・・・なんですが、⑧と⑨の間に重要なイベントがあります。

 その前に、「失敗➡大失敗➡大成功」の法則を黒丸+数字。「AとB。主人公成長」の法則を白四角+数字。「大どんでん返し」の要素()+数字として分かりやすくしました。

 

➊「大成功」➡主人公現実世界に帰還する 321p/328p

②本敵を倒す 309p/328p

➌「大失敗」ヒロインを殺されたことによる真の力の覚醒 307p/328p

④本敵とバトルスタート 297p/328p

⑸どんでん返しによって、味方が本敵に変わる 290p/328p

⑥タイムリミットを意識した主人公が、強引に本敵を暴く 288p/328p

⑦ヒロインがタイムリミットを示唆する 267p/328p

⑧初夜からのプロポーズからのハネムーン 218p~261p/328p

9⃣「AとB。主人公成長」の法則。主人公Bを選ぶ 217p/328p

⑩主人公、罠に嵌められて敵に殺されかける 210p/328p

⑪敵に殺されかけるきっかけをヒロインが作る 195p/328p

⓬「失敗」主人公の過去。超絶モブキャラクター、サチの死 190p/328p

⒀本敵に敗れる。⑸への伏線含む 186p/328p

⑭本敵と戦うことになった 175p/328p

⑮本敵と戦うことになる原因をヒロインが作る 168p/328p

 

 ・・・と、ここでいったんストップしましょう。

 ⑪から⑮まで、要素だけ切り出してみると、けっこう脈絡がないんですよね。

 でも、話として読んでいくと繋がっている不思議。

 そして、⑪と⓬は9⃣にかかわる大事なエピソードですし、⒀がなければ⑸でどんでん返しが起こせません。

 ここでの要素は、連続しているというよりは後の要素の遠因となる要素です。

 伏線パートといってもいいかもしれません。

 

➊「大成功」➡主人公現実世界に帰還する 321p/328p

②本敵を倒す 309p/328p

➌「大失敗」ヒロインを殺されたことによる真の力の覚醒 307p/328p

④本敵とバトルスタート 297p/328p

⑸どんでん返しによって、味方が本敵に変わる 290p/328p

⑥タイムリミットを意識した主人公が、強引に本敵を暴く 288p/328p

⑦ヒロインがタイムリミットを示唆する 267p/328p

⑧初夜からのプロポーズからのハネムーン 218p~261p/328p

9⃣「AとB。主人公成長」の法則。主人公Bを選ぶ 217p/328p

⑩主人公、罠に嵌められて敵に殺されかける 210p/328p

⑪敵に殺されかけるきっかけをヒロインが作る 195p/328p

⓬「失敗」主人公の過去。超絶モブキャラクター、サチの死 190p/328p

⒀本敵に敗れる 186p/328p

⑭本敵と戦うことになった 175p/328p

⑮本敵と戦うことになる原因をヒロインが作る 168p/328p

⑯主人公の切り札(必殺技)が炸裂し、バトルに勝利 158p/328p

 

 この切り札が露見したことによって本敵に目を付けられ、⑭が発生します。

 ⑮は実のところヒロインが原因を作ったわけではありませんが、本敵がいきなり主人公に挑むのは脈絡がありませんから、ヒロインが本敵と主人公の繋ぎ役といったところでしょう。

主人公が切り札を出すには、危機的な状況に追い詰めなければいけませんので、⑰です。

 

➊「大成功」➡主人公現実世界に帰還する 321p/328p

②本敵を倒す 309p/328p

➌「大失敗」ヒロインを殺されたことによる真の力の覚醒 307p/328p

④本敵とバトルスタート 297p/328p

⑸どんでん返しによって、味方が本敵に変わる 290p/328p

⑥タイムリミットを意識した主人公が、強引に本敵を暴く 288p/328p

⑦ヒロインがタイムリミットを示唆する 267p/328p

⑧初夜からのプロポーズからのハネムーン 218p~261p/328p

9⃣「AとB。主人公成長」の法則。主人公Bを選ぶ 217p/328p

⑩主人公、罠に嵌められて敵に殺されかける 210p/328p

⑪敵に殺されかけるきっかけをヒロインが作る 195p/328p

⓬「失敗」主人公の過去。超絶モブキャラクター、サチの死 190p/328p

⒀本敵に敗れる 186p/328p

⑭本敵と戦うことになった 175p/328p

⑮本敵と戦うことになる原因をヒロインが作る 168p/328p

⑯主人公の切り札(必殺技)が炸裂し、バトルに勝利 158p/328p

⑰フロアボスに挑んだモブキャラを主人公たちが助けに入り、窮地に 153p/328p

⑱フロアボス強いぞシーン 134p/328p

⑲軍登場。全滅フラグ 123p/328p

 

 ⑰~⑲はセットです。というか⑯のためのエピソードですね。

 モブキャラ(コーバッツ)は、そのためだけに現れて死ぬようなものです。さようなら。

 

➊「大成功」➡主人公現実世界に帰還する 321p/328p

②本敵を倒す 309p/328p

➌「大失敗」ヒロインを殺されたことによる真の力の覚醒 307p/328p

④本敵とバトルスタート 297p/328p

⑸どんでん返しによって、味方が本敵に変わる 290p/328p

⑥タイムリミットを意識した主人公が、強引に本敵を暴く 288p/328p

⑦ヒロインがタイムリミットを示唆する 267p/328p

⑧初夜からのプロポーズからのハネムーン 218p~261p/328p

9⃣「AとB。主人公成長」の法則。主人公Bを選ぶ 217p/328p

⑩主人公、罠に嵌められて敵に殺されかける 210p/328p

⑪敵に殺されかけるきっかけをヒロインが作る 195p/328p

⓬「失敗」主人公の過去。超絶モブキャラクター、サチの死 190p/328p

⒀本敵に敗れる 186p/328p

⑭本敵と戦うことになった 175p/328p

⑮本敵と戦うことになる原因をヒロインが作る 168p/328p

⑯主人公の切り札(必殺技)が炸裂し、バトルに勝利 158p/328p

⑰フロアボスに挑んだモブキャラを主人公たちが助けに入り、窮地に 153p/328p

⑱フロアボス強いぞシーン 134p/328p

⑲主人公とヒロインが初パーティ。その先で軍登場。全滅フラグ 123p/328p

⑳敵(クラディール)に圧勝。ヘイトを買う 115p/328p

㉑主人公とヒロインがパーティを組むのに反対した敵が決闘を挑んでくる 110p/328p

 

 ⑳も⑩のための伏線です。

 で、㉑なんで敵と戦うことになったのかー、というエピソード。

 

➊「大成功」➡主人公現実世界に帰還する 321p/328p

②本敵を倒す 309p/328p

➌「大失敗」ヒロインを殺されたことによる真の力の覚醒 307p/328p

④本敵とバトルスタート 297p/328p

⑸どんでん返しによって、味方が本敵に変わる 290p/328p

⑥タイムリミットを意識した主人公が、強引に本敵を暴く 288p/328p

⑦ヒロインがタイムリミットを示唆する 267p/328p

⑧初夜からのプロポーズからのハネムーン 218p~261p/328p

9⃣「AとB。主人公成長」の法則。主人公Bを選ぶ 217p/328p

⑩主人公、罠に嵌められて敵に殺されかける 210p/328p

⑪敵に殺されかけるきっかけをヒロインが作る 195p/328p

⓬「失敗」主人公の過去。超絶モブキャラクター、サチの死 190p/328p

⒀本敵に敗れる 186p/328p

⑭本敵と戦うことになった 175p/328p

⑮本敵と戦うことになる原因をヒロインが作る 168p/328p

⑯主人公の切り札(必殺技)が炸裂し、バトルに勝利 158p/328p

⑰フロアボスに挑んだモブキャラを主人公たちが助けに入り、窮地に 153p/328p

⑱フロアボス強いぞシーン 134p/328p

⑲主人公とヒロインが初パーティ。その先で軍登場。全滅フラグ 123p/328p

⑳敵(クラディール)に圧勝。ヘイトを買う 115p/328p

㉑主人公とヒロインがパーティを組むのに反対した敵が決闘を挑んでくる 110p/328p

㉒ヒロインが好きな敵のヘイトを買う

㉓ヒロインの家に主人公が行くことになった

 

 主人公、着実にヘイトを稼いでいくスタイル!

 なんでヒロインの家に行くことになったの?

 

➊「大成功」➡主人公現実世界に帰還する 321p/328p

②本敵を倒す 309p/328p

➌「大失敗」ヒロインを殺されたことによる真の力の覚醒 307p/328p

④本敵とバトルスタート 297p/328p

⑸どんでん返しによって、味方が本敵に変わる 290p/328p

⑥タイムリミットを意識した主人公が、強引に本敵を暴く 288p/328p

⑦ヒロインがタイムリミットを示唆する 267p/328p

⑧初夜からのプロポーズからのハネムーン 218p~261p/328p

9⃣「AとB。主人公成長」の法則。主人公Bを選ぶ 217p/328p

⑩主人公、罠に嵌められて敵に殺されかける 210p/328p

⑪敵に殺されかけるきっかけをヒロインが作る 195p/328p

⓬「失敗」主人公の過去。超絶モブキャラクター、サチの死 190p/328p

⒀本敵に敗れる 186p/328p

⑭本敵と戦うことになった 175p/328p

⑮本敵と戦うことになる原因をヒロインが作る 168p/328p

⑯主人公の切り札(必殺技)が炸裂し、バトルに勝利 158p/328p

⑰フロアボスに挑んだモブキャラを主人公たちが助けに入り、窮地に 153p/328p

⑱フロアボス強いぞシーン 134p/328p

⑲主人公とヒロインが初パーティ。その先で軍登場。全滅フラグ 123p/328p

⑳敵(クラディール)に圧勝。ヘイトを買う 115p/328p

㉑主人公とヒロインがパーティを組むのに反対した敵が決闘を挑んでくる 110p/328p

㉒ヒロインが好きな敵のヘイトを買う 87p/328p

㉓ヒロインの家に主人公が行くことになった 87p/328p

㉔レア食材GET! 74p/328p

▢25「AとB。主人公成長」の法則。主人公Aを選ぶ 57p/328p

㉖デスゲームに巻き込まれる 39p/328p

 

 ㉔と25に間には、二年の月日があります。

 逆にいえば、二年の経験を経て、主人公が変わる瞬間を切り取った物語がソードアートオンラインなのでしょう。キリトだけに。

 

 ということで。長くなりましたので、この記事はここで終わりにしたいと思います。 

 次回は、この書き出した要素からソードアートオンラインの要素を省いてみたいと思います。

 そうすることで、オリジナルストーリーの要素を当て込みやすく、かつ要素をいじくりやすくしてみます。

 

【小説・考察】ソードアートオンライン1巻の構成を考察してみた② 読者を飽きさせないストーリー構成

 願わくは、皆様の創作活動の一助となりますように。

 

 ソードアートオンラインから学ぼう二回目の記事です。

 

 ネラバレ含みます。ネタバレが嫌いな方はそのままウィンドウを閉じてください。

 ご理解いただいた方のみ、記事を読み進めていってください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  考えれば考えるほど、ドツボにハマって書きだせませんでした。

 最初、前回考察したストライク・ザ・ブラッドのように「敗北➡大敗北➡大勝利」の法則がないように思えましたが、よくよく、本当によくよくよくよく考えるとソードアートオンラインにもこの法則が見つかりました。

 分かりやすくするため、要点を書き出してみます。

 

・ゲーム内に取り込まれる 39p/328p

・レア素材GET  74p/328p

・ヒロイン(アスナ)の家にご招待  87p/328p

・敵(クラディール)のヘイトを買う 87p/328p

・ヒロイン、男女を意識させるような発言をする 98p/328p

敵とバトル 110p/328p

・敵に圧勝。さらにヘイトを買う 115p/328p

・軍登場。全滅フラグ 123p/328p

・フロアボス強ぇぞ伏線 134p/328p

・ヒロインの手作り弁当 140p/328p

・軍のモブキャラ(コーバッツ中佐)現る 146p/328p

フロアボスと戦闘 155p/328p

・主人公(キリト)の隠し必殺技炸裂 158p/328p

・なんか主人公とヒロイン急接近 166p/328p

・本敵(ヒースクリフ茅場晶彦)とのバトルが決まる 175p/328p

本敵とのバトル開始 181p/328p

・勝った! と思ったら負けた! 186p/328p

・主人公、過去を語る 190p/328p

敵に襲撃されて殺されかける! 201p/328p

・ヒロイン参上! 211p/328p

・主人公、人を殺す 215p/328p

・主人公とヒロイン、超いい雰囲気 217p/328p

・ヒロインとの初夜 244p/328p

・からの~、プロポーズ 231p/328p

・ヒロインと同棲! 爆発しろリア充! 236p/328p

・階層攻略難航のお知らせ 245p/328p

・有名人(ヒロイン)と結婚した優越感! 255p/328p

・ヒロインが惚気る! 258p/328p

・フロアボス、マジつえーはフラグ 261p/328p

・イチャラブ 265p/328p

フロアボスとバトル 276p/328p

ラストバトル! 297p/328p

・主人公勝利! 309p/328p

・主人公現実世界に戻ってくる 321p/328p

 

 

 主人公の戦闘は計六回。うちわけは五勝一敗です。

 「失敗➡大失敗➡大成功」の法則からすると、あれ、負けてないじゃん、となります。

 とはいえ、主人公の<目的>はデスゲームから現実世界に戻ることですから、本敵(ラスボス)であるヒースクリフ(茅場昌彦)を倒してゲームクリアとなった309pが大成功であるのは間違いありません。

 主人公に唯一の黒星を付けたのも本敵ですが、ヒロインと二人でパーティを組む承諾を得るために本敵(ヒースクリフ)との戦闘であって、直接的に大勝利に関わっているとはいえません(伏線に放っていますが)

 じゃあ、やっぱり「失敗➡大失敗➡大成功」の法則が存在しないのかというと、そうではありません。

 ソードアートオンラインは、戦闘の勝敗がこの法則に適応されているわけではないのです。

 「敗北➡大敗北➡大勝利」ではなく、「失敗➡大失敗➡大成功」と書いたのはそれが理由です。

 「大成功」の前に「大失敗」がある。

 では、その「大失敗」とはなにか?

 

 ヒロインの死

 

 これでしょう。

 ヒロインは主人公を守って(庇って)死にます。

 主人公はヒロインを守れなかったのです。

 そして、「敗北」とは

 

 190p。主人公の過去にでてきた人物の死

 

 のちの巻でも登場するモブキャラクター黒猫団のサチです。

 モブキャラクターはモンスターの集団に襲われて死にます。

 主人公はモブキャラクターを守れなかったのです。

 

 そう考えた時、本敵の勝利がまた別のものに見えてきました。

 「失敗➡大失敗➡大成功」なのであれば、本敵の勝利が最後ならば、それは「失敗➡大失敗➡大勝利」になってしまいます。これではおかしい。最後は「大勝利」ではなく「大成功」てはいけません。

 もっと言えば「仲間を死なせてしまった➡大事な人を死なせてしまった➡大事な人を助けられた」でなくてはいけないのです。

 321pで主人公は現実世界に戻ってきていますが、ヒロインとの邂逅はできていません。

 325pでヒロインの帰還もほのめかされていますし、主人公やヒロインは死なないでしょ、という読者の思考も活用して、ヒロインは主人公とともに現実世界に帰還したと思わせています。

 つまり、「大事な人を助けられた」を達成させているわけです。

 実は、ヒロインは現実世界に帰還していないのですが、妄想の翼を広げると、原作は再開していたのではないかな、と。たぶん編集的なものがあったと勝手に推測します。

 

 さて、これで「失敗➡大失敗➡大成功」の法則があると判明しました。

 正確には、「仲間を死なせてしまった➡大事な人を死なせてしまった➡大事な人を助けられた」、です。

 文字にすると単純な流れですが、ストライク・ザ・ブラッドの「敗北➡大敗北➡大勝利」とは違って、簡単な流れではないですよね。

 ・・・いや、ストライク・ザ・ブラッドの流れが単純だと言っているわけではないのですが、ソードアートオンラインストライク・ザ・ブラッドよりも多くのページを主人公の心情変化に使っています。

 ストライク・ザ・ブラッドの記事を思い出しましょう。

 本敵を倒すためには、偽主人公の力が必要だった。それを引き出すためには主人公が偽主人公に血を吸われても良いと思う心情変化と状況設定が必要だった。

 心情変化に使われたのは、主人公の暗い過去。それを偽主人公が全肯定することによって主人公は心を開いて血を吸われても良いと思える心情変化がおこっています。

 一方、ソードアートオンラインでは・・・

 

 

・ゲーム内に取り込まれる 39p/328p

・レア素材GET  74p/328p

・ヒロイン(アスナ)の家にご招待  87p/328p

・敵(クラディール)のヘイトを買う 87p/328p

・ヒロイン、男女を意識させるような発言をする 98p/328p

敵とバトル 110p/328p

・敵に圧勝。さらにヘイトを買う 115p/328p

・軍登場。全滅フラグ 123p/328p

・フロアボス強ぇぞ伏線 134p/328p

・ヒロインの手作り弁当 140p/328p

・軍のモブキャラ(コーバッツ中佐)現る 146p/328p

フロアボスと戦闘 155p/328p

・主人公(キリト)の隠し必殺技炸裂 158p/328p

・なんか主人公とヒロイン急接近 166p/328p

・本敵(ヒースクリフ茅場晶彦)とのバトルが決まる 175p/328p

本敵とのバトル開始 181p/328p

・勝った! と思ったら負けた! 186p/328p

・主人公、過去を語る 190p/328p

敵に襲撃されて殺されかける! 201p/328p

・ヒロイン参上! 211p/328p

・主人公、人を殺す 215p/328p

・主人公とヒロイン、超いい雰囲気 217p/328p

・ヒロインとの初夜 244p/328p

・からの~、プロポーズ 231p/328p

・ヒロインと同棲! 爆発しろリア充! 236p/328p

・階層攻略難航のお知らせ 245p/328p

・有名人(ヒロイン)と結婚した優越感! 255p/328p

・ヒロインが惚気る! 258p/328p

・フロアボス、マジつえーはフラグ 261p/328p

・イチャラブ 265p/328p

フロアボスとバトル 276p/328p

ラストバトル! 297p/328p

・主人公勝利! 309p/328p

・主人公現実世界に戻ってくる 321p/328p

 

 もう一度要点を記載しました。

 青色太文字が主人公の心情変化に関わる部分です。

 十二エピソードもあります。

 めっちゃ多くないですか?

 エロゲーか!? ってな具合に主人公に対するヒロインの好感度が上がっていきます。

 ちなみに、主人公がヒロインを攻略しているのではなく、ヒロインが主人公を攻略しているところがポイント。

 読者は男性が多いでしょうから、美少女から猛アプローチなんて最高の展開・・・なんですけど、ここでも主人公の設定が活きています。

 超絶モブキャラクター、サチを死なせてしまったトラウマを抱えている主人公は、自ら率先して人と関わろうとしない。

 ヒロインと関わっていくことで、主人公が変わっていく。

 ソードアートオンラインは、そういう物語なのです。

 

 色々な物書き指南本を見ていると、主人公の設定について必ず書いてあるものがあります。

 それは、主人公は〇であってはいけない。主人公はパックマンのように、欠けた部分を用意する必要がある、です。

 物語は、主人公の欠けた部分を埋め、成長していくお話。

 かのポケットビスケッツは歌っています。

 

「ハッピーエンドの欠片集めて続いていく」

 

 さて、ではどうやって欠片を集めて成長した主人公を描くのか。

 一番簡単なのが、序盤と終盤で違う選択肢を選ぶこと。

 序盤でAかBか二択があり、主人公はAを選んだ。

 終盤で、序盤と同じAとBの選択肢が現れる。そこで主人公はBを選んだ。

 これが成長を表します。

 ソードアートオンラインに置き換えてみましょう。

 序盤での選択肢は、フレンド(クライン)と愉快な仲間たちと一緒にデスゲームを攻略するかのところ。

 57pです。

 

主人公「いいか、よく聞け。俺はすぐにこの街を出て、次の村に向かう。お前も一緒に来い」

フレンド「(前略)ダチだった奴らと一緒に徹夜で並んでソフトを買ったんだ(中略)置いて・・・いけねえ」

主人公「なら、ここで別れよう(以下略)」

 

 A:フレンドと愉快な仲間たちと一緒に行動する

 B:フレンドと愉快な仲間たちと一緒に行動しない

 

 主人公はBを選んだわけです。

 なぜか?

 主人公はベータテスターで、ある程度のところまでは熟知しており、フレンドだけならば安全に攻略できるが、愉快な仲間たちもいては難しいと判断したからです。

 同時に、この選択は主人公の欠けたものを表していなければいけません。

 いったい、主人公には何が欠けていたのか?

 ちょっと情報が足りなくて分かりません。

 考察を進めていきます。

 序盤でBを選んだ主人公は、終盤でBを選択できるよう成長しなければいけません。

 しかし、以下の選択肢では話が合わなくなります。

 

 A:フレンドと愉快な仲間たちと一緒に行動する

 B:フレンドと愉快な仲間たちと一緒に行動しない

 

 なぜならば、フレンドはコミック・リリーフという役割が決まっているからです。

 そして、先にも書いた通り、ソードアートオンラインは、「ヒロインと関わっていくことで、主人公が変わっていく」物語です。

 なので、選択肢の内容をそれに合わせて改変します。

 

 A:ヒロインと一緒に行動する

 B:ヒロインと一緒に行動しない

 

 ふむ・・・。これでは、序盤の選択肢と意味が若干異なっているような気がします。

 もっと単純に考えてみましょう。

 

Q:一緒にパーティ組もうぜ!

 A:いいよ!

 B:やだよー

 

 なんで「やだよー」なのか。

 作中に書いてありました。

 

 仮に道中で死者が出て、そしてその結果、茅場の宣言通りそのプレーヤーが脳を焼かれて現実でも死んだとき。

 その責は、安全なはじまりの街の脱出を提案し、しかも仲間を守れなかった俺に帰せられねばならない。

 そんな途轍もない重みを背負うことなど、俺にはできない。絶対にできるはずがない。

 

 つまり「俺のせいで人が死ぬとか無理だわー。重いわー。重すぎだわー。そんな責任取れねーわー。だから連れていけねーわー」と判断してBにしたわけです。

 それを鑑みると、選択肢の内容は・・・

 

 A:命を懸けて護るから一緒に現実世界に戻ろう!

 B:いやー、ちょっと責任重いからやめとくわ

 

 だいぶそれっぽくなってきました。

 主人公に欠けていたものが、だいぶ見えてきました。

 そして、主人公は超絶モブキャラクター、サチのギルド黒猫団に所属し、失敗します。

 Aを選んで、黒猫団全滅。

 主人公には、まだAの選択は早かった。

 さらに終盤。主人公はまた同じAかBかの選択が提示されます。

 相手はヒロイン。

 該当箇所は「敵に襲撃されて殺されかける! 201p/328p」イベント終了後の217pか、「からの~、プロポーズ 231p/328p」

 ページ数的に終盤というよりも終盤突入直後、あるいは直前といったところでしょうか。

 もう少し後の方でも探してみたんですが、ここ以外にAとBの選択肢がないんですよね。

 おそらく、「失敗➡大失敗➡大成功」の法則と「AとB。主人公成長」の法則が並行して進んでいるからでしょう。同時に複数の要素は入れられなかったと思われます。

 時系列的に並べてみました。

 ◆が「失敗➡大失敗➡大成功」の法則要素

 ○が「AとB。主人公成長」の法則要素です。

 

○一回目の選択肢。フレンドと一緒に行く?いかない? 59p/328p

○◆二回目の選択肢&失敗。主人公、過去を語る 190p/328p

○三回目の選択肢。主人公プロポーズをする 231p/328p

◆大失敗。主人公を庇ってヒロイン死す 303p/328p

◆大成功。主人公現実世界に戻ってくる 321p/328p

 

 先発「失敗➡大失敗➡大成功」の法則

 後発「AとB。主人公成長」の法則

 となっています。

 さらに、味方が実は本敵だった! という「どんでん返し」要素(▲で表記)も加わります。

 

○一回目の選択肢。フレンドと一緒に行く?いかない? 59p/328p

▲本敵に勝った! と思ったら負けた! 伏線 186p/328p

○◆二回目の選択肢&失敗。主人公、過去を語る 190p/328p

○三回目の選択肢。主人公プロポーズをする 231p/328p

▲本敵とラストバトル! 伏線回収 297p/328p

◆大失敗。主人公を庇ってヒロイン死す 303p/328p

◆大成功。主人公現実世界に戻ってくる 321p/328p

 

 ちょっと文字数が多くなってしまったので、このあたりで切りたいと思いますが。

 ソードアートオンラインは、三つの要素を駆使して、読者を飽きさせないストーリー構成としているのが分かったと思います。

 ストライク・ザ・ブラッドは、謎を随所に配置することで読者を飽きさせない構成をしていました。

 二作を比較することで、構成の違いが分かったお思います。

 

 それでは次回は、逆算して構成を考える、です。

【小説・考察】ソードアートオンライン1巻の構成を考察してみた① キャラの役割+主人公について

 願わくは、皆様の創作活動の一助となりますように。

 

 小説考察、第二回目はソードアートオンラインです。

 本編だけで現在26巻。その他、派生系のガンゲイルも含めるとたくさん。

 ゲームの中に取り込まれた系作品では、ログホライズンやアリアデイルの大地にて等、先駆者(たぶん)もありますが、トップをひた走る作品といっても過言ではないでしょう。

 私はアニメを見て原作を読んだクチですが、読後の衝撃はいまだに忘れられません。

 以下、ネタバレ含みます。ネタバレが嫌いな方はそのままウィンドウを閉じてください。

 ご理解いただいた方のみ、記事を読み進めていってください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まさか一巻で終わらないだろう・・・という設定にもかかわらず、まさかの一巻完結。正確には完結していないのですが、続編がなくとも問題ない終わり方です太。

 一巻でラスボスを倒す作品は、後にも先にもソードアートオンライン以外ではスレイヤーズしか知りません(私の見識不足もあると思いますが)。

 無駄なシーンを入れていては規定枚数をオーバーしてしまいます。緻密なストーリー構成が不可欠でしょう

 これほど考察がいのある作品はありません。

 

 ということで、前回のストライク・ザ・ブラッド同様、まずは主人公から考察していきたいと思います。

 主な登場人物は以下のとおり(登場順)

 

・キリト:主人公 9p/328p

・クライン:仲間 15p/328p

茅場晶彦:本敵 40p/328p

エギル:仲間 80p/328p

アスナ:ヒロイン 82p/328p

・クラディール:敵 88p/328p

・コーバッツ:モブ 146p/328p

ヒースクリフ:味方➡本敵(茅場晶彦) 170p/328p

・ゴドフリー:モブ 196p/328p

・ニシダ:モブ 238p/328p

 

 主な・・・と言いながらも、ネームドキャラをすべて(たぶん)あげました。

 起承転結で四分割するとして一枠82p。そのギリギリの「起」部分にヒロイン登場。

 仲間のクラインは1巻では・・・というか、本編通じて物語のキーとなるキャラクターが主人公に次ぐ二番目の登場とか。

 そして、80pで出てくるエギルもクライン同様、脇役キャラクターですが、ヒロインよりも登場順番が早い。

 この二名は、おそらくコミック・リリーフ。

 コミック・リリーフとは、まじめな話ばかりで読者を飽きさせないように、またあまりに深刻な雰囲気を和らげるためのコミカルな登場人物のことです。

 クラインは、美人に弱く、友情に篤いキャラ(かなり後の巻で美人のNPCになにかするためスキルポイント的な何かを盛大にぶっ込んで、主人公たちにドン引きされていた記憶があります)。

 エギルも、あくどい商人&厳つい人相に反して攻略組を支えていた生産職として1巻で描かれています。のちの巻では、彼の喫茶店(酒場)が主人公たちの溜まり場になっていますから、キーキャラクターであることは間違いありません。

 序盤で本敵を登場させるのは必須なので茅場晶彦ヒースクリフ)の15p登場は妥当な登場でしょう。

 

 話がそれました。

 主人公のキリトについて。

 前回考察のストライク・ザ・ブラッドでは、「明確な目的を持ち、物語を動かしていく人物」。そして、「物語のはじめに追い詰められた状況あるいは苦境・逆境に立たされている人物」が主人公であると書きました。

 では、キリトはどうでしょう?

 

「物語のはじめに追い詰められた状況あるいは苦境・逆境に立たされている人物」

 

 これは、ゲームの中に取り込まれた系作品において容易に達成できる条件です。

 異世界転生系と言い換えてもいいかもしれません。

 前述のログホライズン、リアデイルの大地にて他、転生したらスライムだった件、蜘蛛ですがなにか、オーバーロード、ありふれた職業で世界最強、デスマーチからはじまる異世界狂想曲スマートフォンとともに、ゲート、戦国自衛隊、JIN、ゼロの使い魔(読んでませんが)、火魅子伝etc...

 別世界に取り込まれてしまった時点で、主人公(たち)は<追い詰められた><苦境><逆境>に立たされています。

 主人公がチートで、最強の能力をもっているから<追い詰められ>ても<苦境>でも<逆境>でもなくね? と思うかもしれませんが、それは違います。

 分かりやすいたとえが、戦国自衛隊とJINでしょう。

 戦国自衛隊は、自衛隊が過去(戦国時代)にタイプスリップしてしまう作品です。小銃や戦車VS火縄銃や騎馬。どちらが勝つかは目に見えています・・・が、序盤で自衛官が死んでいます(たしか)。最強の武器や兵器があっても異世界という環境によって人間は簡単に死んでしまう。殺されてしまうのです。

 JINは現代の医者が過去(江戸時代・・・たぶん)にタイプスリップしてしまう作品です。医学知識や外科技術があっても、医者の武器である機材や薬がないので助けられる人間も助けられません。これも異世界という環境による効果です。

 

 ソードアートオンラインのキリトは、VRMMOの中に取り込まれ、HPが0になったら現実世界の身体も死亡。脱出するには最上階にいるラスボスを倒さなければならないという、かなりハードな状況に立たされています。

 よって、「物語のはじめに追い詰められた状況あるいは苦境・逆境に立たされている人物」はクリアされているでしょう。

 

 次に「明確な目的を持ち、物語を動かしていく人物」ですが、これを二番目に回した理由には訳がありまして・・・。

 前回書いたストライク・ザ・ブラッドと同じように、実はキリトが明確に<目的>をもったは物語の終盤なんですよね・・・。

 

 ただ、56pデスゲーム開始直後に下記のようなエピソードがあります。

 

 

 俺はもう、当分の間――数ヵ月、あるいはそれ以上、現実世界には戻れない。母親や妹の顔を見ることも、会話することもできない。ひょっとしたらその時は永遠に来ないかもしれない。この世界で死ねば――

 俺は本当に死ぬのだ。

(中略)

「いいか、よく聞け。俺はすぐにこの町を出て、次の村に向かう。お前も一緒に来い」

(中略)

「いや・・・、おめぇにはこれ以上世話になるわけにゃいかねえよな。俺だって(中楽)おめぇは気にしてねぇで、次の村に行ってくれ」

「・・・・・・」

 黙り込んだまま、俺は数秒間、かつて覚えがないほど激烈な葛藤に見舞われた。

 

 

 そしてキリトは、フレンドになったクラインを見捨てて、一人で次の村へと向かいます。

 キリトは明確な言葉として「クリアするんだ!」とは言っていません。しかし、次の村に向かうという、ゲームクリアを目的とした明確な行動をとっています。

 対照的にほかのモブキャラクターは

 

 

 悲鳴。怒号。絶望。罵声。懇願。そして方向。

 たった数十分でゲームプレーヤから囚人へと変えられてしまった仁玄たちは、頭を抱えてうずくまり、両手を突き上げ、抱き合い、あるいは罵り合った。

 

 と書かれています。

 ほかのプレイヤーが行動に移さない中、キリトだけが行動に移ったような描写(ちなみに、どこかのサイドストーリーでは、同様に行動に移ったプレイヤーとキリトのエピソードが書かれています)。

 この対比がキリトを「明確な目的を持ち、物語を動かしていく人物」とさせ、主人公たらしめています。

 

 しかし、その後のキリトは明確に<目的>を示していません。

 超レアアイテムの食材をGETしてひゃっはーしたり、アスナとイチャイチャしているせいで嫉妬に狂った敵に殺されかけたり、アスナと新婚生活を楽しんだり、アインクラッドで最高の季節の、さらに最高の気象設定の中で昼寝を決め込んでみたり・・・まったく脱出する意欲を見せてくれていないからです。

 

 そして、キリトが言葉で明確に<目的>を表明したのはp268/328pのド終盤。

 序盤56pのあのエピソードだけで、ここまで引っ張れる作者の技量に畏敬の念を禁じえません。

 なぜ、ここまで主人公の<目的>が明確化されていない中、読者を飽きさせずにこれたのかは、次の考察で検証します。

 

 さて、ド終盤のエピソードはこちら。

 階層ボスに向かうため招集がかかった時のこと。

 キリトが、「このゲームの世界でアスナと一緒に暮らしたい」と弱音を吐いたとき、アスナが言います。「向こうの世界の身体もいつまでも生きていられるとは限らない」と。

 そこでキリトは「だから・・・今は戦わなきゃいけないんだな・・・」と、アスナと現実世界に戻ろうと決意するのです。

 ヒロインについての考察はしていませんでしたが、主人公の背中を押して戦いに向かわせる。決意を固めさせる。そのような役割があるのでしょう。

 アスナの言葉がなければ、キリトは<目的>への決意を決められなかったはずです。

 前回のストライク・ザ・ブラッドとも姫柊雪菜の背中を押す一言がなければ、暁古城は敵へと立ち向かっていませんでした。

 

 主人公が自己完結的に「おっしゃあ! 敵ぶっ殺す!」となるのではなく、ヒロインが関わって、「おっしゃあ! 敵ぶっ殺す!」となるのが良い物語なのでしょう。

 凡人の私には上手いたとえが浮かびませんが。

ヒロイン「敵を倒さないと私たちは幸せになれないの!」

主人公「OK。なら敵を倒すぜ!」

 みたいな感じでしょうか。

 このあたりは、今後考察していく作品にも取り込んでみようと思います。

 

 

 さて、次回はストーリー構成です。

 序盤と終盤以外はのんびり異世界ストーリーライフを送っていた主人公。それなのになぜ読者はページを捲るのかを考察していきたいと思います。

 

【小説・考察】ストライク・ザ・ブラッド1巻の構成を考察してみた④ まとめ

 さて、ストライク・ザ・ブラッドを使った物語の構成の考察。

 四回目の記事となります。

 概ね書きたいことは書いてしまいましたので、簡潔に書いていこうと思います。

 

 物語を書く上でプロットは大事。

 最後まで書きあがったプロットを、一回から三回の記事を参考に見直してみてください。

 

 ・主人公の置かれた状況はどうですか? 危機的状況、苦境、逆境となっていますか?

 ・最後の戦闘で大勝利を収めるため、その前に大敗北、さらにその前に敗北は書かれていますか?

 ・5p前後、最大でも15p以内に謎・伏線・伏線の回収が描かれていますか?

 

 やべーねぇよ! という方は、もう一度プロットを見直してみてください。

 これを意識しているだけで、物語の楽しさがグッと増す・・・はずです。

 

 

 さて、次回はソードアートオンラインの構成を考察してみたいと思います。

 ご興味がありましたら、また是非記事を読みに来てください。

【小説・考察】ストライク・ザ・ブラッド1巻の構成を考察してみた② ヒロインを活かすストーリー構成

 願わくは、皆様の創作活動の一助となりますように。

 

 ストライク・ザ・ブラッドから学ぼう二回目の記事です。

 

 前回、ストライク・ザ・ブラッドの主人公が姫柊雪菜であると判明しました。

 今回は、その主人公を活かすストーリー構成を考察してみようと思います。

 

 ストライク・ザ・ブラッドは、バトルものの王道であるスカッと感がでる構成が採用されています。

 

 敵との戦闘は三回。

 一回目は、奇しくも退けることができた。

 二回目は、惨敗。

 三回目は、ダメなのか・・・と思わせておいての大逆転勝利。

 

 この、「敗北➡大敗➡失敗するか・・・いや逆転大勝利!」という流れが、バトルものの王道であり、スカッとする構成となっています。

 カタルシス、というやつですね。

 

 NARUTO・・・と、前記事と同じ漫画を例に出すのは能がないので、僕のヒーローアカデミアにしましょう。主人公である緑谷出久は異能力を持たない一般人でしたが、ナンバーワンヒーローのオールマイトに能力を授かり、超強力な異能を得ることになります。しかし、すぐに超強力な異能力者になったかといえばそうではなくて、敗北に敗北を重ねて勝利を勝ち取ります。

 漫画ばかりではアレなのでラノベも例にあげてみましょう。

 ダンジョンで出会いを求めるのは間違っているだろうかの主人公ベル・クラネルも敗北に敗北を重ねて最後には勝利をもぎ取っています。

 

 では、どのようにしてこの流れを作るか。

 敗北➡大敗➡大勝利・・・の順番でなく、大勝利➡大敗➡敗北の順から作るのです。

 大勝利の段階は、すでに伏線が明らかにされ、切り札が使われていた全部の要素が出揃ったあとですから、「そう言えば伏線張るのを忘れていた!」みたいなことがなく、あとからストーリー構成を変更せずに済むメリットがあります。

 

 ではここでストライク・ザ・ブラッドで考察していきましょう。

ネラバレ含みます。ネタバレが嫌いな方はそのままウィンドウを閉じてください。

 ご理解いただいた方のみ、記事を読み進めていってください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 主人公(姫柊雪菜)の切り札(必殺技)は、祝詞によって力を全開放させた武器(雪霞狼)による一撃です。

 そして、その切り札を使う前段階として、偽主人公(暁古城)の吸血鬼の能力の行使が突破口となり、主人公の切り札が敵に通るようになります。

 なので、①を行うためには、②を行う必要があります。

 

①大勝利(主人公が必殺技で敵を倒す)

②主人公の必殺技を通すため、偽主人公が吸血鬼の能力を行使する

 

 では、②を行うためには、③として何が必要か。

 吸血鬼の能力を解放するには、美少女の血を吸うことが必要ですので、

 

①大勝利(主人公が必殺技で敵を倒す)

②主人公の必殺技を通すため、偽主人公が吸血鬼の能力を行使する

③偽主人公が美少女の血を吸う

 

 でも簡単に血を吸わせてはくれません。

 それが<障害>となるわけですが、血を吸う本人である偽主人公は、自らその<障害>を突破しません。<障害>を突破するのは主人公の役目です。なので血を吸われる本人が自ら<障害>を突破します。

 意味が分からないよ。と思うかもしれませんが、なんのこともありません。

 作者は、偽主人公に血を吸ってもらわなければならない危機的な状況に主人公を陥れたのです。

 Fate/stay nightで、衛宮士郎遠坂凛とHをする理由と同じですね。

 魔術師として未熟な衛宮士郎は、自身の魔力ではサーヴァント(使い魔)であるセイバーに十分な魔力を供給ができません。

 しかし、先の戦闘で大量の魔力を失ったセイバーは、きたる戦いに備えて魔力を補充しなければいけない。

 では、どうやって魔力を補充するか。

 膨大な魔力をストックしている遠坂凛とHすることによって、魔力を分けてもらうのです。魔術師同士の魔力の受け渡しはHしかない、というエロゲ的強引な設定ではありますが。

 遠坂凛もセイバーに勝ってもらわなければいけない理由があるため、Hせざるを得ない。

 これと同じです。

 ストライク・ザ・ブラッドでは、偽主人公が二回も自らの命の危険を顧みずに主人公の危機を救っています。

 さらに、偽主人公は、「可愛い」とか「無事で安心した」とか、これまで異性に褒められたり護られたりしていなかった主人公の心に刺さる言動をしまくっています。

 それにホダされて、真のヒロインは血を吸わせてしまうわけですね。

 なので、③を行うには、④。④を行うには⑤が必要となります。

 

①大勝利(主人公が必殺技で敵を倒す)

②主人公の必殺技を通すため、偽主人公が吸血鬼の能力を行使する

③偽主人公が美少女の血を吸う

④主人公が血を吸われても仕方がないと思える状況設定

⑤主人公が血を吸われても良いと思える心情の変化

 

 ⑤は、コツコツと偽主人公が好感度を稼ぐイベントを作中に盛り込んでいますね。これが伏線です。

 そして、①大勝利に最も必要なのが⑥です。

 

①大勝利(主人公が必殺技で敵を倒す)

②主人公の必殺技を通すため、偽主人公が吸血鬼の能力を行使する

③偽主人公が美少女の血を吸う

④主人公が血を吸われても仕方がないと思える状況設定

⑤主人公が血を吸われても良いと思える心情の変化

⑥大敗北。主人公が必殺技を使っても勝てなかった。

 

 これがあるからこそ、①大勝利が活きるのです。

 ストライク・ザ・ブラッドにおける、どんでん返し要素です。

 Aだと思っていたのにB・・・いやCだった! みたいな読者の度肝を抜くような、大どんでん返しではありません。

 A(雪霞狼の一撃)では勝てないと思っていなのに、B(吸血鬼の能力)を使って、A(雪霞狼の一撃)で勝った、というものです。

 

 そうです。

 忘れていましたが、②③④④が行われる上での前提条件がありました。

 それは、美少女の血を吸えば偽主人公の<吸血鬼の能力>が解放されると主人公が知っていること、です。

 これを知らなければ、血を吸わせようとは思わないですよね。

 なので、⑦は・・・

 

①大勝利(主人公が必殺技で敵を倒す)

②主人公の必殺技を通すため、偽主人公が吸血鬼の能力を行使する

③偽主人公が美少女の血を吸う

④主人公が血を吸われても仕方がないと思える状況設定

⑤主人公が血を吸われても良いと思える心情の変化

⑥大敗北。主人公が必殺技を使っても勝てなかった

⑦<吸血鬼の能力>が解放条件の開示

 

 作中では敗北・・・一回目の戦闘のあとで開示されています。

 そして、⑦を行うには・・・

 

①大勝利(主人公が必殺技で敵を倒す)p286

②主人公の必殺技を通すため、偽主人公が吸血鬼の能力を行使するp269

③偽主人公が美少女の血を吸うp251

④主人公が血を吸われても仕方がないと思える状況設定p247

⑤主人公が血を吸われても良いと思える心情の変化p234

⑥大敗北。主人公が必殺技を使っても勝てなかった。p214

⑦吸血鬼の能力が解放条件の開示p166

⑧敗北p155

 

 です。敗北することで、なんで負けたのかの検証が行われ、⑦に繋がるわけです。

 これが、「敗北➡大敗北➡大勝利」の原型です。

 ストライク・ザ・ブラッドの固有名詞を抜かして、書いてみます。

 

①主人公の必殺技によって敵を倒す

②主人公の必殺技で敵を倒すための『なにか』が使われる

③『なにか』を使うための条件を満たす

④主人公が『なにか』を使うのも仕方がないと思える状況設定

⑤主人公が『なにか』を使っても良いと思える心情の変化

⑥主人公が必殺技を使っても敵に通じず大敗北

⑦『なにか』を使うための解放条件を開示

⑧敗北

 

 と、なります。

 いや、わかんねーよ。と思った人。

 次の【小説・考察】記事をお待ちください。

 ただいま別の作品を精読中です。

 その作品をこれに当てはめて検証しますので。

 「ソードアートオンライン」「銀河英雄伝説」「隠蔽捜査」「賢者の孫」「そうだ売国しよう」を予定しています。

 

 次の記事は、謎と伏線について考察していきたいと思います。

【小説・考察】ストライク・ザ・ブラッド1巻の構成を考察してみた① 主人公は誰?

 願わくは、皆様の創作活動の一助となりますように。

 

 この記事は、ストーリー考察ではなく、ストーリー“構成”の考察です。

 キャラクターの関係性や世界観、魔法や呪術、設定等の考察ではありません。

 ストーリー構成を紐解き、起承転結や伏線、その回収、キャラクターの役割などを分析し、オリジナル作品を作るためのヒントにするための考察となっております。

 が、私はプロではありません。ド素人が個人的に好き勝手言っていると生暖かい目で見ていただけると助かります。

 

 さて、第一回目のストーリー考察は、電撃文庫より出版されている三雲岳斗著『ストライク・ザ・ブラッド』です。全24巻(本編22巻+番外編2巻)完結済みの作品です。2013年10月にアニメ化もされていますね。

 この作品の胸を借りて勉強させてもらおうと思います。

 

 ストライク・ザ・ブラッドをご存じではない方もいると思うので、まずは概要から。

 ・・・注意点。ネラバレ含みます。ネタバレが嫌いな方はそのままウィンドウを閉じてください。

 ご理解いただいた方のみ、記事を読み進めていってください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「主人公がヒロインと共闘して敵をぶっ倒す話」

 

 簡潔にまとめてみました。

 

 では、ストライク・ザ・ブラッドにおける主人公とは誰でしょうか?

 公式サイトで紹介されているキャラクターを箇条書きにしてみました。

 

・暁古城

・姫柊雪菜

・暁凪沙

・矢瀬基樹

・藍羽浅葱

・南宮那月

・オイスタッハ

・アスタルテ

 

 辞書ではこうあります

 

「事件や小説・劇などの中心人物。ヒーローまたはヒロイン」

 

 なるほど。

 では、物書きの視点からはいかがでしょうか。

 色々とあると思いますが、私は「明確な目的を持ち、物語を動かしていく人物」。そして、「物語のはじめに追い詰められた状況あるいは苦境・逆境に立たされている人物」だと思っています。

 漫画の有名どころで言えば、NARUTO。ナルトは、忍術が使えない落ちこぼれで、村を襲った九尾の狐だとされ、嫌われています。めちゃくちゃ追い詰められていますし、苦境で逆境な状況に立たされていますが、ナルトは村一番の忍である火影になると明確な目的を持っています。

 もちろん、サイドストーリー等でサスケやサクラたちが主人公として活躍する作品も多々ありますが、メインストーリーにおいてナルトは間違いなく主人公です。

 

 では、なぜ物書きにとって「明確な目的を持ち、物語を動かしていく人物」。そして、「物語のはじめに追い詰められた状況あるいは苦境・逆境に立たされている人物」が主人公なのか。

 それは、この二つの条件が揃わないと筆が進まないからです。

 マジで途中で止まります。

 主人公が動かなくなります。

 話が進まなくなります。

 なぜなのか。

 自問自答していくと、私は決まって一つの結論に行きつきます。

 それは、自らの作品の主人公が「明確な目的を持ち、物語を動かしていく人物」としてストーリーに組み込まれておらず、「物語のはじめに追い詰められた状況あるいは苦境・逆境に立たされている人物」として、構成されていなかったから、です。

 

 では、話を元に戻し、実際の商業作品に照らし合わせて考えてみましょう。

 ストライク・ザ・ブラッドの主人公は誰か。

 この場合の主人公とは辞書的な意味ではなく、「明確な目的を持ち、物語を動かしていく人物」、「物語のはじめに追い詰められた状況あるいは苦境・逆境に立たされている人物」です。

 まぁ、普通に考えて・・・

 

・暁古城

・姫柊雪菜

 

 この二人でしょう。

 そして、読者の大半が男性であることを考えると、暁古城が主人公と考えるのが妥当です。

 ここで姫柊雪菜が主人公だ! と思った方。さすがです。

 私も姫柊雪菜こそが主人公であると確信しております。

 それはなぜなのかを説明するため、稚拙ではありますが独自にあらすじを書いてみました。 

 

 

 暁古城は、太平洋に浮かんだ人工島に住むごく普通の高校生だったが、ある事件をきっかけに世界最強の吸血鬼となってしまう。

 吸血鬼となってしまったあともごく普通の高校生活を送っていたところ、世界最強の吸血鬼の存在を危険視する組織Aから監視役(姫柊雪菜)が派遣される。さらに監視役には、暁古城が危険人物だと判明した際に抹殺できるよう強力な武器が貸与されていた。

 姫柊雪菜は暁古城と同じ学園の中等部に編入し、居住先も隣室に引っ越してくるという徹底ぶりで監視をおこなっていく。

 数日が経ったある日、暁古城と姫柊雪菜は敵と敵の先兵が住民の魔族と戦闘している場面に遭遇し、襲われていた魔族を救出する。

 しかし、救出の際に暁古城の吸血鬼の力が暴走してしまい、戦場となった場所は大破壊されてしまった。

 世間では謎の大破壊事件として報道され、修復費用は数億。もし犯人が暁古城とだと判明すれば、犯罪者となるばかりではなく、巨額の損害賠償を請求されてしまう。

 組織Bは、この事件を最近多発している魔族連続襲撃事件と関連性があるとみて捜査をしているらしい。暁古城は組織Bよりも早く敵を見つけて確保する必要があった。

 藍羽浅葱の能力を使い、敵の潜伏先を推測し、暁古城と姫柊雪菜が乗り込んでいく。

 そこには敵と敵の先兵が潜んでおり、戦闘に発展。

 敵の先兵は、先日の戦闘データをもとにパワーアップしていて苦戦を強いられる。

 パワーアップの原因となったのが姫柊雪菜の武器であることが発覚し、姫柊雪菜は衝撃を受けるとともに致命的な隙を見せてしまう。敵の先兵の凶刃が襲い掛かろうとしたとき、暁古城が身を挺して姫柊雪菜を庇うも、致命傷を負ってしまう。

 暁古城と姫柊雪菜を無力化した敵は、目的地へと向かっていくが、そこにはバイト中の藍羽浅葱がいた。

 藍羽浅葱のバイトとは、人工島の管理業務の委託であった。

 人工島は島に住む人たちの生命線であり、何十もの防衛機構を備えている。容易く敗れるものではないが、敵は姫柊雪菜から得た戦闘データから得た力で易々と防衛機構を突破し、組織Bの警備を蹴散らしていく。

 目を覚ました暁古城は敵の目的地を知り、そこでバイトしている藍羽浅葱のことを思い出す。心配して連絡を取ると、藍羽浅葱は敵と接触しており、図らずとも敵の居場所を知ることとなる。

 そして、藍羽浅葱の能力を使い、敵の目的が判明。

 姫柊雪菜は正義感から敵の目的を阻止しようと行動しようとするが、暁古城は敵の目的が敵の正義に基づく行動であると知り、躊躇してしまう。

 姫柊雪菜は暁古城の葛藤に気づき、自らの血を差し出すことで暁古城の背中を後押しする。

 暁古城と姫柊雪菜は、敵の目的が達成する直前で間に合い、対峙する。

 暁古城の正義と敵の正義がぶつかり、言葉では分かり合えないと知り、そこで初めて暁古城が明確に敵と戦うことを決意。

「ここから先は、オレのケンカだ!」

「いいえ、先輩。わたしたちのケンカ、です――!」

 三目の戦闘の幕が切って落とされる。

 姫柊雪菜が差し出した血によって暁古城の吸血鬼としての能力が目覚め、敵と渡り合うも、やはり敵は強大だった。

 吸血鬼の能力を使っても決定打になりえない。

 しかし、姫柊雪菜の一撃が勝負を決める。

「いいえ、先輩。このたたかいは、わたしたちの勝ちですよ」

 

 

 暁古城と姫柊雪菜は共闘し、敵をぶっ倒して終了。

 エピローグは次巻へと続く伏線的なものなので端折ります。

 

 さて、お気づきでしょうか。

 暁古城が明確な目的を持ったのは、なんと最後の戦闘の直前、260p/297pなんです。

 一応、巨額の損害賠償を払いたくないから、という仮の目的が中盤162p/297pで設けられていますが、出てくるタイミングが遅すぎますし、動機としてはめちゃくちゃ弱い。

 物語の基本として、主人公の目的、敵、そして障害は序盤で読者に明示されなくてはなりません。

 そして、主人公は「明確な目的を持ち、物語を動かしていく人物」、「物語のはじめに追い詰められた状況あるいは苦境・逆境に立たされている人物」でなければならないのです。

 なぜ、「物語のはじめに追い詰められた状況あるいは苦境・逆境に立たされている人物」か。

 逆にすべてが上手くいっている状況を読んで読者は楽しいのか? ということです。

 ポルノグラフィティは歌っています。

 

「最初からハッピーエンドの映画なんて3分あれば終わっちゃうだろ?」

 

 物語も同じです。

 そして、バトルもののお約束として、最後の一撃は主人公が必殺技で倒さなければならないという鉄則があります。

 NARUTOでは、ナルトが敵を影分身の術という必殺技でぶっ倒しています。

 しかし、ストライク・ザ・ブラッド1巻で敵を倒したのは、姫柊雪菜の必殺技です。暁古城はアシストに回っています。

 

 ワンピースでも親玉を倒すのは、ルフィです。

 ソードアートオンラインでもラスボスを倒すのは、キリトです。

 ストライク・ザ・ブラッドの主人公は、残念ながらアシストしかしていません。

 

 つまり、最後の一撃の鉄則からすると、主人公は暁古城ではなく、姫柊雪菜です。

 そして、姫柊雪菜は序盤25pで世界最強の監視役に任命されています。

 支度金として一千万円を渡されていて、「いつ死んでも悔いが残らないようにしておけと経理のおばさまに言われた」そうですから、どれだけヤバい任務なのかが分かります。

 さらに、危険な存在だと判断した場合、抹殺するよう命じられ、明確な目的を持たされています。

 暁古城よりも姫柊雪菜のほうが「物語のはじめに追い詰められた状況あるいは苦境・逆境に立たされている人物」であることが分かります。

 

 この二点からも暁古城ではなく、姫柊雪菜が主人公であるとお分かりになると思いますが、もう一つの根拠を上げます。

 

 物語というのは、主人公の成長物語です。

 NARUTOでは、最弱だったナルトが最強の忍にまで成長しています。

 では、暁古城はというと・・・微妙ですね。

 逆に姫柊雪菜は明確に成長しています。

 あらすじでは端折りましたが、一回目と二回目の敵との戦闘の直前、ヒロインは主人公がついてこようとするのを止めています。

 しかし、三回目の戦闘では、主人公が付いてくるのが当たり前のように「行きましょう先輩」と声をかけています。

 最初はを選んでいたのに、最後はBを選んだ。これが成長です。

 一方、暁古城は「俺やヒロインが行ってどうすんだ・・・?」と情けないことをほざいています。

 そして、暁古城と出会った直後の姫柊雪菜ならば、自ら進んで血を差し出すようなことはしなかったでしょう。

 

 以上の三点から姫柊雪菜が主人公であることが判明しました。

 

 まぁ・・・こんなことをしなくても分かり切ったことではあったんですけどね・・・。

 だって全巻の表紙がすべてヒロインなんですもん。

 

 では、なぜこんな長々と主人公談義をしたかというと、「明確な目的を持ち、物語を動かしていく人物」だからです。

 ストライク・ザ・ブラッドは、序盤こそ美少女が二人しか現れませんが、最終的に十二人+@の美少女を侍らせるハーレムもの?です。

 そのハーレムの中心人物=主人公ではない、というのが重要。

 

 繰り返しになりますが、主人公は物語を動かしていく人物です。

 いわば物語の心臓です。

 これを意識してストーリーを構成しないと作品を書き上げられません。

 

 さて、次回はその主人公(姫柊雪菜)を活躍させるためのストーリー構成を考察していきたいと思います。

【小説・考察】ストライク・ザ・ブラッド1巻の構成を考察してみた③ 謎と伏線

 願わくは、皆様の創作活動の一助となりますように。

 

 一回目は、主人公が誰なのか。物書き視点で言えば、主人公をどのような立場に置けばいいのかを書きました。

 二回目は、「敗北➡大敗北➡大勝利」のストーリー構成の書き方を書きました。

 そして、第三回目は、謎と伏線です。

 

 謎があるから、読者はページを捲りたくなる。

 そして、謎とは読者がページを捲りたくなるものでなければならない。

 名探偵コナンで、警察が解決できるような事件であったらコナンが出る幕もなく、毛利小五郎が素面のままで解決できるような謎では、物語は数ページで終わってしまいます。

 コナンをしても、最初は「どうやって犯人は犯行に及んだんだ!?」という謎でなければならないんですね。

 

 そして、謎を解決するためのヒントが伏線です。

 この伏線を張ることで、「あ、そういえばあの描写(台詞)の意味はこれだったのか」と読者に思わせ、納得感を出してくれます。

 逆に伏線がないとご都合主義っぽくなって、読者は醒めてしまいます。

 

 では、ストライク・ザ・ブラッドにおける謎とは何か。

 作中に出てきた順番に、その単語を箇条書きにしていきます。

 

ネラバレ含みます。ネタバレが嫌いな方はそのままウィンドウを閉じてください。

 ご理解いただいた方のみ、記事を読み進めていってください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・都市前節のたぐいである、世界最強の吸血鬼、第四始祖の疑惑①p22

・偽主人公の吸血鬼疑惑①(吸血鬼の特徴。朝弱いっす)p30

・サブヒロイン(藍羽浅葱)が偽主人公に恋慕している疑惑②p35

・吸血鬼の眷獣を無力化する槍ってなにそれすごい③p53

・吸血鬼の眷獣を素手で止める偽主人公なにそれすごい①p54

・再偽主人公の吸血鬼疑惑(第四真祖の夢)①p58

・主人公が妹と同じ学校に転校してきたなにそれこわい①p64

・組織A(獅子王機関)って何? なんか吸血鬼の天敵らしい。近づいちゃいけないの? マジで?④p68

・再々偽主人公の吸血鬼疑惑①(吸血鬼の特徴。女の子のにおい嗅いで鼻血ブー)p76

・組織Aについての伏線回収④(謎解明)p82

・偽主人公の吸血鬼疑惑の伏線回収①(謎解明)p85

・偽主人公が吸血鬼になった理由が分からない⑤p89

・敵が仲間(美少女)を使ってチンピラ魔族に美人局する⑥p94

・敵の仲間が強かった件⑦(眷獣無力化)p100

・再サブヒロイン(藍羽浅葱)が偽主人公に恋慕している疑惑②p114

・偽主人公は元バスケ少年だった!⑧p122

・偽主人公、価値観を語る!⑨p124

・主人公の過去が明かされる・・・っ!⑩p130

・敵の仲間が強かった件2⑦p143

・吸血鬼の眷獣を無力化する槍ってなにそれすごい。伏線回収(謎やや解明)③p144

・敵の正体は分かったけど目的が分からない!⑥p145

・偽主人公の力はなぜ暴走した?⑪p163

・サブヒロインがなんだか忙しい⑫p171

・再々サブヒロインが偽主人公に恋慕している疑惑②p178

・魔族狩りをしている者がいるらしい⑥p183

・サブヒロインの能力が判明。伏線回収⑫

・敵の仲間の意味深な台詞⑥p205

・敵、オレ強くなったぜ発言⑦p206

・敵の自白。連続魔族襲撃犯は俺だ!伏線回収⑥p208

・敵、主人公の過去を使って精神攻撃を仕掛ける!伏線回収⑩p209

・敵、オレ強くなったは嘘じゃなかった!伏線回収⑦p212

・偽主人公死亡!?⑬p215

・サブヒロインのバイトが判明!伏線回収⑫217

・再々々サブヒロインが偽主人公に恋慕している疑惑②p219

・オレ強くなったぜ。その理由。伏線回収⑦p223

・偽主人公死んでなかった!伏線回収⑬p227

・偽主人公、主人公を篭絡する!伏線回収⑩p235

・偽主人公、サブヒロインとコンタクト!伏線回収⑫p241

・偽主人公、サブヒロインを使って敵の目的を知る!?伏線回収⑥p244

・偽主人公、眷獣を飼いならす!伏線回収⑨⑪p250

・敵の目的を知る!!伏線回収⑥p255

・ラストバトル!主人公のバスケ技が冴える!伏線回収⑧p262

 

 書き出し作業・・・辛かった・・・

 

 さて、謎と伏線あわせて13個。まとめていきます。

 この巻で解決済みの謎および伏線を黒。未回収のものを青、先の記事の敗北➡大敗北➡大勝利に関わる謎・伏線を赤で書いています。

 

①偽主人公の吸血鬼疑惑。伏線回収。

②サブヒロインの恋慕。継続中。サブヒロインは、このあとの巻(何巻か忘れましたが)で回収されています。これは、いつ告白するんだ! というドキドキと嫉妬するサブヒロインのラブコメ的要素で謎というよりは、引き要素が強いですね。

③主人公の持つ切り札、雪霞狼の秘密。伏線回収。

④主人公が所属する組織A獅子王機関ってなに?という謎。すぐに回収されてます。

⑤偽主人公が吸血鬼になった謎。継続中。これはこの作品の根幹にかかわる部分なので、終盤まで引っ張りまくってます。

⑥敵の目的に対しての謎。このあと、さらに3回、敵の目的のヒントがだされ、終盤で謎が回収されています。

⑦敵の仲間(アスタルテ)の強さ。弱いはずのホムンクルスがなんで強いねーん。という話。⑥の敵の目的と主人公と偽主人公が大敗北の伏線にもなっています。回収済み。

⑧バスケ経験者しかも強い偽主人公。という設定がないと、最後の戦闘シーンがご都合主義に。まぁ・・・バスケ経験者が戦闘のプロと互角に・・・げふん。回収済み。

⑨偽主人公の価値観。これを書いておかないと、主人公に危険人物認定されて抹殺されてしまいます。また、主人公が血を吸われてもいいかも、と思われる大切な発言。回収済み。

⑩主人公の精神的に弱い部分の暴露。敵はこれを突いて主人公の動揺を誘い隙を作り、偽主人公は主人公を手籠めにする手段として用いています。主人公に血を吸われてもいいかも、と心情変化をさせる大事な伏線。回収済み。

⑪偽主人公が切り札を使えない理由について。解決条件の提示がされています。これがないと主人公が、血を吸われても仕方がない状況が作れません。回収済み。

⑫サブヒロインのお仕事についての伏線。序盤でもあった気がしますが、伏線っぽく書かれているのがここなので、こちらを採用。サブヒロインがいないと敵の目的が判明できないので、重要な役割です。回収済み。

⑬メインキャラなので、偽主人公が死ぬはずがありませんから、まぁ、なぞというよりは引き要素。回収済み

 

 重要な謎・伏線はp124~p163/p297と中盤で出し切っています。

 そして回収はp235とp250。終盤で一遍に回収しています。

 また、多くの謎・伏線・伏線回収が5p前後。長くても15p以内(p数はざっくりなのでご容赦ください)と、かなりの頻度で書かれています。

 ここから推測できるのは、5p前後で謎・伏線・伏線回収をおこなわないと読者に飽きられてしまう、ということでしょう。

 一見、無駄な雑談に見えて、その内容はすべて意味がある。

 物語にまったく関係のないものは、妹の暁凪沙との会話くらいのものでしょうか。妹のキャラ付けという意味合いもあるので、無意味ではありませんが。

 親友キャラの矢瀬基樹もこの巻ではモブですが、次巻以降に頭角を現しますので、その伏線の意味合いがあるでしょう。今回は1巻に関係なかったのでピックアップしていません。

 

 では次の記事が最後。まとめになります。

 よろしければ読んでいってください。