【小説・考察】ストライク・ザ・ブラッド1巻の構成を考察してみた② ヒロインを活かすストーリー構成

 願わくは、皆様の創作活動の一助となりますように。

 

 ストライク・ザ・ブラッドから学ぼう二回目の記事です。

 

 前回、ストライク・ザ・ブラッドの主人公が姫柊雪菜であると判明しました。

 今回は、その主人公を活かすストーリー構成を考察してみようと思います。

 

 ストライク・ザ・ブラッドは、バトルものの王道であるスカッと感がでる構成が採用されています。

 

 敵との戦闘は三回。

 一回目は、奇しくも退けることができた。

 二回目は、惨敗。

 三回目は、ダメなのか・・・と思わせておいての大逆転勝利。

 

 この、「敗北➡大敗➡失敗するか・・・いや逆転大勝利!」という流れが、バトルものの王道であり、スカッとする構成となっています。

 カタルシス、というやつですね。

 

 NARUTO・・・と、前記事と同じ漫画を例に出すのは能がないので、僕のヒーローアカデミアにしましょう。主人公である緑谷出久は異能力を持たない一般人でしたが、ナンバーワンヒーローのオールマイトに能力を授かり、超強力な異能を得ることになります。しかし、すぐに超強力な異能力者になったかといえばそうではなくて、敗北に敗北を重ねて勝利を勝ち取ります。

 漫画ばかりではアレなのでラノベも例にあげてみましょう。

 ダンジョンで出会いを求めるのは間違っているだろうかの主人公ベル・クラネルも敗北に敗北を重ねて最後には勝利をもぎ取っています。

 

 では、どのようにしてこの流れを作るか。

 敗北➡大敗➡大勝利・・・の順番でなく、大勝利➡大敗➡敗北の順から作るのです。

 大勝利の段階は、すでに伏線が明らかにされ、切り札が使われていた全部の要素が出揃ったあとですから、「そう言えば伏線張るのを忘れていた!」みたいなことがなく、あとからストーリー構成を変更せずに済むメリットがあります。

 

 ではここでストライク・ザ・ブラッドで考察していきましょう。

ネラバレ含みます。ネタバレが嫌いな方はそのままウィンドウを閉じてください。

 ご理解いただいた方のみ、記事を読み進めていってください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 主人公(姫柊雪菜)の切り札(必殺技)は、祝詞によって力を全開放させた武器(雪霞狼)による一撃です。

 そして、その切り札を使う前段階として、偽主人公(暁古城)の吸血鬼の能力の行使が突破口となり、主人公の切り札が敵に通るようになります。

 なので、①を行うためには、②を行う必要があります。

 

①大勝利(主人公が必殺技で敵を倒す)

②主人公の必殺技を通すため、偽主人公が吸血鬼の能力を行使する

 

 では、②を行うためには、③として何が必要か。

 吸血鬼の能力を解放するには、美少女の血を吸うことが必要ですので、

 

①大勝利(主人公が必殺技で敵を倒す)

②主人公の必殺技を通すため、偽主人公が吸血鬼の能力を行使する

③偽主人公が美少女の血を吸う

 

 でも簡単に血を吸わせてはくれません。

 それが<障害>となるわけですが、血を吸う本人である偽主人公は、自らその<障害>を突破しません。<障害>を突破するのは主人公の役目です。なので血を吸われる本人が自ら<障害>を突破します。

 意味が分からないよ。と思うかもしれませんが、なんのこともありません。

 作者は、偽主人公に血を吸ってもらわなければならない危機的な状況に主人公を陥れたのです。

 Fate/stay nightで、衛宮士郎遠坂凛とHをする理由と同じですね。

 魔術師として未熟な衛宮士郎は、自身の魔力ではサーヴァント(使い魔)であるセイバーに十分な魔力を供給ができません。

 しかし、先の戦闘で大量の魔力を失ったセイバーは、きたる戦いに備えて魔力を補充しなければいけない。

 では、どうやって魔力を補充するか。

 膨大な魔力をストックしている遠坂凛とHすることによって、魔力を分けてもらうのです。魔術師同士の魔力の受け渡しはHしかない、というエロゲ的強引な設定ではありますが。

 遠坂凛もセイバーに勝ってもらわなければいけない理由があるため、Hせざるを得ない。

 これと同じです。

 ストライク・ザ・ブラッドでは、偽主人公が二回も自らの命の危険を顧みずに主人公の危機を救っています。

 さらに、偽主人公は、「可愛い」とか「無事で安心した」とか、これまで異性に褒められたり護られたりしていなかった主人公の心に刺さる言動をしまくっています。

 それにホダされて、真のヒロインは血を吸わせてしまうわけですね。

 なので、③を行うには、④。④を行うには⑤が必要となります。

 

①大勝利(主人公が必殺技で敵を倒す)

②主人公の必殺技を通すため、偽主人公が吸血鬼の能力を行使する

③偽主人公が美少女の血を吸う

④主人公が血を吸われても仕方がないと思える状況設定

⑤主人公が血を吸われても良いと思える心情の変化

 

 ⑤は、コツコツと偽主人公が好感度を稼ぐイベントを作中に盛り込んでいますね。これが伏線です。

 そして、①大勝利に最も必要なのが⑥です。

 

①大勝利(主人公が必殺技で敵を倒す)

②主人公の必殺技を通すため、偽主人公が吸血鬼の能力を行使する

③偽主人公が美少女の血を吸う

④主人公が血を吸われても仕方がないと思える状況設定

⑤主人公が血を吸われても良いと思える心情の変化

⑥大敗北。主人公が必殺技を使っても勝てなかった。

 

 これがあるからこそ、①大勝利が活きるのです。

 ストライク・ザ・ブラッドにおける、どんでん返し要素です。

 Aだと思っていたのにB・・・いやCだった! みたいな読者の度肝を抜くような、大どんでん返しではありません。

 A(雪霞狼の一撃)では勝てないと思っていなのに、B(吸血鬼の能力)を使って、A(雪霞狼の一撃)で勝った、というものです。

 

 そうです。

 忘れていましたが、②③④④が行われる上での前提条件がありました。

 それは、美少女の血を吸えば偽主人公の<吸血鬼の能力>が解放されると主人公が知っていること、です。

 これを知らなければ、血を吸わせようとは思わないですよね。

 なので、⑦は・・・

 

①大勝利(主人公が必殺技で敵を倒す)

②主人公の必殺技を通すため、偽主人公が吸血鬼の能力を行使する

③偽主人公が美少女の血を吸う

④主人公が血を吸われても仕方がないと思える状況設定

⑤主人公が血を吸われても良いと思える心情の変化

⑥大敗北。主人公が必殺技を使っても勝てなかった

⑦<吸血鬼の能力>が解放条件の開示

 

 作中では敗北・・・一回目の戦闘のあとで開示されています。

 そして、⑦を行うには・・・

 

①大勝利(主人公が必殺技で敵を倒す)p286

②主人公の必殺技を通すため、偽主人公が吸血鬼の能力を行使するp269

③偽主人公が美少女の血を吸うp251

④主人公が血を吸われても仕方がないと思える状況設定p247

⑤主人公が血を吸われても良いと思える心情の変化p234

⑥大敗北。主人公が必殺技を使っても勝てなかった。p214

⑦吸血鬼の能力が解放条件の開示p166

⑧敗北p155

 

 です。敗北することで、なんで負けたのかの検証が行われ、⑦に繋がるわけです。

 これが、「敗北➡大敗北➡大勝利」の原型です。

 ストライク・ザ・ブラッドの固有名詞を抜かして、書いてみます。

 

①主人公の必殺技によって敵を倒す

②主人公の必殺技で敵を倒すための『なにか』が使われる

③『なにか』を使うための条件を満たす

④主人公が『なにか』を使うのも仕方がないと思える状況設定

⑤主人公が『なにか』を使っても良いと思える心情の変化

⑥主人公が必殺技を使っても敵に通じず大敗北

⑦『なにか』を使うための解放条件を開示

⑧敗北

 

 と、なります。

 いや、わかんねーよ。と思った人。

 次の【小説・考察】記事をお待ちください。

 ただいま別の作品を精読中です。

 その作品をこれに当てはめて検証しますので。

 「ソードアートオンライン」「銀河英雄伝説」「隠蔽捜査」「賢者の孫」「そうだ売国しよう」を予定しています。

 

 次の記事は、謎と伏線について考察していきたいと思います。