【小説・考察】ソードアートオンライン1巻の構成を考察してみた② 読者を飽きさせないストーリー構成
願わくは、皆様の創作活動の一助となりますように。
ソードアートオンラインから学ぼう二回目の記事です。
ネラバレ含みます。ネタバレが嫌いな方はそのままウィンドウを閉じてください。
ご理解いただいた方のみ、記事を読み進めていってください。
考えれば考えるほど、ドツボにハマって書きだせませんでした。
最初、前回考察したストライク・ザ・ブラッドのように「敗北➡大敗北➡大勝利」の法則がないように思えましたが、よくよく、本当によくよくよくよく考えるとソードアートオンラインにもこの法則が見つかりました。
分かりやすくするため、要点を書き出してみます。
・ゲーム内に取り込まれる 39p/328p
・レア素材GET 74p/328p
・ヒロイン(アスナ)の家にご招待 87p/328p
・敵(クラディール)のヘイトを買う 87p/328p
・ヒロイン、男女を意識させるような発言をする 98p/328p
・敵とバトル 110p/328p
・敵に圧勝。さらにヘイトを買う 115p/328p
・軍登場。全滅フラグ 123p/328p
・フロアボス強ぇぞ伏線 134p/328p
・ヒロインの手作り弁当 140p/328p
・軍のモブキャラ(コーバッツ中佐)現る 146p/328p
・フロアボスと戦闘 155p/328p
・主人公(キリト)の隠し必殺技炸裂 158p/328p
・なんか主人公とヒロイン急接近 166p/328p
・本敵(ヒースクリフ=茅場晶彦)とのバトルが決まる 175p/328p
・本敵とのバトル開始 181p/328p
・勝った! と思ったら負けた! 186p/328p
・主人公、過去を語る 190p/328p
・敵に襲撃されて殺されかける! 201p/328p
・ヒロイン参上! 211p/328p
・主人公、人を殺す 215p/328p
・主人公とヒロイン、超いい雰囲気 217p/328p
・ヒロインとの初夜 244p/328p
・からの~、プロポーズ 231p/328p
・ヒロインと同棲! 爆発しろリア充! 236p/328p
・階層攻略難航のお知らせ 245p/328p
・有名人(ヒロイン)と結婚した優越感! 255p/328p
・ヒロインが惚気る! 258p/328p
・フロアボス、マジつえーはフラグ 261p/328p
・イチャラブ 265p/328p
・フロアボスとバトル 276p/328p
・ラストバトル! 297p/328p
・主人公勝利! 309p/328p
・主人公現実世界に戻ってくる 321p/328p
主人公の戦闘は計六回。うちわけは五勝一敗です。
「失敗➡大失敗➡大成功」の法則からすると、あれ、負けてないじゃん、となります。
とはいえ、主人公の<目的>はデスゲームから現実世界に戻ることですから、本敵(ラスボス)であるヒースクリフ(茅場昌彦)を倒してゲームクリアとなった309pが大成功であるのは間違いありません。
主人公に唯一の黒星を付けたのも本敵ですが、ヒロインと二人でパーティを組む承諾を得るために本敵(ヒースクリフ)との戦闘であって、直接的に大勝利に関わっているとはいえません(伏線に放っていますが)
じゃあ、やっぱり「失敗➡大失敗➡大成功」の法則が存在しないのかというと、そうではありません。
ソードアートオンラインは、戦闘の勝敗がこの法則に適応されているわけではないのです。
「敗北➡大敗北➡大勝利」ではなく、「失敗➡大失敗➡大成功」と書いたのはそれが理由です。
「大成功」の前に「大失敗」がある。
では、その「大失敗」とはなにか?
ヒロインの死
これでしょう。
ヒロインは主人公を守って(庇って)死にます。
主人公はヒロインを守れなかったのです。
そして、「敗北」とは
190p。主人公の過去にでてきた人物の死
のちの巻でも登場するモブキャラクター黒猫団のサチです。
モブキャラクターはモンスターの集団に襲われて死にます。
主人公はモブキャラクターを守れなかったのです。
そう考えた時、本敵の勝利がまた別のものに見えてきました。
「失敗➡大失敗➡大成功」なのであれば、本敵の勝利が最後ならば、それは「失敗➡大失敗➡大勝利」になってしまいます。これではおかしい。最後は「大勝利」ではなく「大成功」てはいけません。
もっと言えば「仲間を死なせてしまった➡大事な人を死なせてしまった➡大事な人を助けられた」でなくてはいけないのです。
321pで主人公は現実世界に戻ってきていますが、ヒロインとの邂逅はできていません。
325pでヒロインの帰還もほのめかされていますし、主人公やヒロインは死なないでしょ、という読者の思考も活用して、ヒロインは主人公とともに現実世界に帰還したと思わせています。
つまり、「大事な人を助けられた」を達成させているわけです。
実は、ヒロインは現実世界に帰還していないのですが、妄想の翼を広げると、原作は再開していたのではないかな、と。たぶん編集的なものがあったと勝手に推測します。
さて、これで「失敗➡大失敗➡大成功」の法則があると判明しました。
正確には、「仲間を死なせてしまった➡大事な人を死なせてしまった➡大事な人を助けられた」、です。
文字にすると単純な流れですが、ストライク・ザ・ブラッドの「敗北➡大敗北➡大勝利」とは違って、簡単な流れではないですよね。
・・・いや、ストライク・ザ・ブラッドの流れが単純だと言っているわけではないのですが、ソードアートオンラインはストライク・ザ・ブラッドよりも多くのページを主人公の心情変化に使っています。
ストライク・ザ・ブラッドの記事を思い出しましょう。
本敵を倒すためには、偽主人公の力が必要だった。それを引き出すためには主人公が偽主人公に血を吸われても良いと思う心情変化と状況設定が必要だった。
心情変化に使われたのは、主人公の暗い過去。それを偽主人公が全肯定することによって主人公は心を開いて血を吸われても良いと思える心情変化がおこっています。
一方、ソードアートオンラインでは・・・
・ゲーム内に取り込まれる 39p/328p
・レア素材GET 74p/328p
・ヒロイン(アスナ)の家にご招待 87p/328p
・敵(クラディール)のヘイトを買う 87p/328p
・ヒロイン、男女を意識させるような発言をする 98p/328p
・敵とバトル 110p/328p
・敵に圧勝。さらにヘイトを買う 115p/328p
・軍登場。全滅フラグ 123p/328p
・フロアボス強ぇぞ伏線 134p/328p
・ヒロインの手作り弁当 140p/328p
・軍のモブキャラ(コーバッツ中佐)現る 146p/328p
・フロアボスと戦闘 155p/328p
・主人公(キリト)の隠し必殺技炸裂 158p/328p
・なんか主人公とヒロイン急接近 166p/328p
・本敵(ヒースクリフ=茅場晶彦)とのバトルが決まる 175p/328p
・本敵とのバトル開始 181p/328p
・勝った! と思ったら負けた! 186p/328p
・主人公、過去を語る 190p/328p
・敵に襲撃されて殺されかける! 201p/328p
・ヒロイン参上! 211p/328p
・主人公、人を殺す 215p/328p
・主人公とヒロイン、超いい雰囲気 217p/328p
・ヒロインとの初夜 244p/328p
・からの~、プロポーズ 231p/328p
・ヒロインと同棲! 爆発しろリア充! 236p/328p
・階層攻略難航のお知らせ 245p/328p
・有名人(ヒロイン)と結婚した優越感! 255p/328p
・ヒロインが惚気る! 258p/328p
・フロアボス、マジつえーはフラグ 261p/328p
・イチャラブ 265p/328p
・フロアボスとバトル 276p/328p
・ラストバトル! 297p/328p
・主人公勝利! 309p/328p
・主人公現実世界に戻ってくる 321p/328p
もう一度要点を記載しました。
青色太文字が主人公の心情変化に関わる部分です。
十二エピソードもあります。
めっちゃ多くないですか?
エロゲーか!? ってな具合に主人公に対するヒロインの好感度が上がっていきます。
ちなみに、主人公がヒロインを攻略しているのではなく、ヒロインが主人公を攻略しているところがポイント。
読者は男性が多いでしょうから、美少女から猛アプローチなんて最高の展開・・・なんですけど、ここでも主人公の設定が活きています。
超絶モブキャラクター、サチを死なせてしまったトラウマを抱えている主人公は、自ら率先して人と関わろうとしない。
ヒロインと関わっていくことで、主人公が変わっていく。
ソードアートオンラインは、そういう物語なのです。
色々な物書き指南本を見ていると、主人公の設定について必ず書いてあるものがあります。
それは、主人公は〇であってはいけない。主人公はパックマンのように、欠けた部分を用意する必要がある、です。
物語は、主人公の欠けた部分を埋め、成長していくお話。
かのポケットビスケッツは歌っています。
「ハッピーエンドの欠片集めて続いていく」
さて、ではどうやって欠片を集めて成長した主人公を描くのか。
一番簡単なのが、序盤と終盤で違う選択肢を選ぶこと。
序盤でAかBか二択があり、主人公はAを選んだ。
終盤で、序盤と同じAとBの選択肢が現れる。そこで主人公はBを選んだ。
これが成長を表します。
ソードアートオンラインに置き換えてみましょう。
序盤での選択肢は、フレンド(クライン)と愉快な仲間たちと一緒にデスゲームを攻略するかのところ。
57pです。
主人公「いいか、よく聞け。俺はすぐにこの街を出て、次の村に向かう。お前も一緒に来い」
フレンド「(前略)ダチだった奴らと一緒に徹夜で並んでソフトを買ったんだ(中略)置いて・・・いけねえ」
主人公「なら、ここで別れよう(以下略)」
A:フレンドと愉快な仲間たちと一緒に行動する
B:フレンドと愉快な仲間たちと一緒に行動しない
主人公はBを選んだわけです。
なぜか?
主人公はベータテスターで、ある程度のところまでは熟知しており、フレンドだけならば安全に攻略できるが、愉快な仲間たちもいては難しいと判断したからです。
同時に、この選択は主人公の欠けたものを表していなければいけません。
いったい、主人公には何が欠けていたのか?
ちょっと情報が足りなくて分かりません。
考察を進めていきます。
序盤でBを選んだ主人公は、終盤でBを選択できるよう成長しなければいけません。
しかし、以下の選択肢では話が合わなくなります。
A:フレンドと愉快な仲間たちと一緒に行動する
B:フレンドと愉快な仲間たちと一緒に行動しない
なぜならば、フレンドはコミック・リリーフという役割が決まっているからです。
そして、先にも書いた通り、ソードアートオンラインは、「ヒロインと関わっていくことで、主人公が変わっていく」物語です。
なので、選択肢の内容をそれに合わせて改変します。
A:ヒロインと一緒に行動する
B:ヒロインと一緒に行動しない
ふむ・・・。これでは、序盤の選択肢と意味が若干異なっているような気がします。
もっと単純に考えてみましょう。
Q:一緒にパーティ組もうぜ!
A:いいよ!
B:やだよー
なんで「やだよー」なのか。
作中に書いてありました。
仮に道中で死者が出て、そしてその結果、茅場の宣言通りそのプレーヤーが脳を焼かれて現実でも死んだとき。
その責は、安全なはじまりの街の脱出を提案し、しかも仲間を守れなかった俺に帰せられねばならない。
そんな途轍もない重みを背負うことなど、俺にはできない。絶対にできるはずがない。
つまり「俺のせいで人が死ぬとか無理だわー。重いわー。重すぎだわー。そんな責任取れねーわー。だから連れていけねーわー」と判断してBにしたわけです。
それを鑑みると、選択肢の内容は・・・
A:命を懸けて護るから一緒に現実世界に戻ろう!
B:いやー、ちょっと責任重いからやめとくわ
だいぶそれっぽくなってきました。
主人公に欠けていたものが、だいぶ見えてきました。
そして、主人公は超絶モブキャラクター、サチのギルド黒猫団に所属し、失敗します。
Aを選んで、黒猫団全滅。
主人公には、まだAの選択は早かった。
さらに終盤。主人公はまた同じAかBかの選択が提示されます。
相手はヒロイン。
該当箇所は「敵に襲撃されて殺されかける! 201p/328p」イベント終了後の217pか、「からの~、プロポーズ 231p/328p」。
ページ数的に終盤というよりも終盤突入直後、あるいは直前といったところでしょうか。
もう少し後の方でも探してみたんですが、ここ以外にAとBの選択肢がないんですよね。
おそらく、「失敗➡大失敗➡大成功」の法則と「AとB。主人公成長」の法則が並行して進んでいるからでしょう。同時に複数の要素は入れられなかったと思われます。
時系列的に並べてみました。
◆が「失敗➡大失敗➡大成功」の法則要素
○が「AとB。主人公成長」の法則要素です。
○一回目の選択肢。フレンドと一緒に行く?いかない? 59p/328p
○◆二回目の選択肢&失敗。主人公、過去を語る 190p/328p
○三回目の選択肢。主人公プロポーズをする 231p/328p
◆大失敗。主人公を庇ってヒロイン死す 303p/328p
◆大成功。主人公現実世界に戻ってくる 321p/328p
先発「失敗➡大失敗➡大成功」の法則
後発「AとB。主人公成長」の法則
となっています。
さらに、味方が実は本敵だった! という「どんでん返し」要素(▲で表記)も加わります。
○一回目の選択肢。フレンドと一緒に行く?いかない? 59p/328p
▲本敵に勝った! と思ったら負けた! 伏線 186p/328p
○◆二回目の選択肢&失敗。主人公、過去を語る 190p/328p
○三回目の選択肢。主人公プロポーズをする 231p/328p
▲本敵とラストバトル! 伏線回収 297p/328p
◆大失敗。主人公を庇ってヒロイン死す 303p/328p
◆大成功。主人公現実世界に戻ってくる 321p/328p
ちょっと文字数が多くなってしまったので、このあたりで切りたいと思いますが。
ソードアートオンラインは、三つの要素を駆使して、読者を飽きさせないストーリー構成としているのが分かったと思います。
ストライク・ザ・ブラッドは、謎を随所に配置することで読者を飽きさせない構成をしていました。
二作を比較することで、構成の違いが分かったお思います。
それでは次回は、逆算して構成を考える、です。